【ソリストの視点】ピアニスト塩見亮が新祝祭と描くラフマニノフのピアノ協奏曲第2番とは

当団は、2022年9月18日に開催する第7回定期演奏会にて、ソリストに塩見亮先生をお迎えし、ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番を演奏します。

これまで5回にわたって当団と共演を重ねてくださった塩見先生に、ラフマニノフの魅力や曲の中で特にこだわりたいポイント、今回の共演への想いなど、幅広くお話を伺いました。

塩見 亮(しおみ たすく)

京都市立堀川高等学校音楽科(現京都市立京都堀川音楽高等学校)、東京藝術大学音楽学部を経て渡独、マンハイム音楽大学大学院研究課程室内楽・歌曲研究科、芸術家育成課程、演奏家育成課程(いずれもピアノ専攻)をそれぞれ最優秀で卒業、ドイツ国家演奏家資格取得。これまでにピアノを市川直子、丸山博子、矢部民、浜口奈々、Paul Danの各氏に、室内楽をPaul Dan、Susanna Rabenschlagの各氏に師事。第47回全日本学生音楽コンクール大阪大会高校の部1位。平成19年度平和堂財団芸術奨励賞、平成24年度大津市文化奨励賞、第24回、第32回京都芸術祭京都府知事賞ほか受賞多数。
国内外におけるリサイタルやオーケストラとの共演など、ソリストとしての活動のみならず、室内楽奏者としてTVやラジオへの出演、(財)青山財団よりTrio Rintonareのコンサートに対して2008年度バロックザール賞を受賞するなど、共演者から厚い信頼を得ている。
Duo Schlügelzeug、Trio Rintonare、Ensemble Vitra各メンバー。現在、京都市立芸術大学音楽学部、相愛大学音楽学部、京都市立京都堀川音楽高等学校各非常勤講師。

目次

ラフマニノフにしかない魅力をいかにして伝えるか

塩見 亮(ピアニスト)

── 塩見先生にはこれまでに何度も共演いただいていますが、ラフマニノフを取り上げるのは初めてです。ラフマニノフという作曲家について、どのような印象をお持ちですか?

塩見:ピアニストとして、ラフマニノフは「憧れの作曲家」です。作品もとても素敵だと感じます。メロディが非常に魅力的ですし、心のひだを震わせる和声進行も素晴らしいですよね。

ラフマニノフの作品を弾いていると、自然に気持ちが音楽に入っていきます。もちろん楽曲の構成もしっかり分析しますが、たとえばブラームスの音楽をコツコツ突き詰めていくのとは、少し心の持ちようが違うと言いますか。

わかりやすく言えば、ラフマニノフの場合、6〜7割弾けてきた時点で、ただただ練習が楽しくなってくるんですよ。作曲家によっては、たとえ10割弾けるようになっても、さらに本番の朝になっても、ずっと不安……という場合もあるのですが。でも、ラフマニノフは違います。ふだん車を運転する最中にも、普通にCDを聴いて盛り上がれるくらい(笑)それほど、純粋な音楽的魅力があるのだと思います。

ピアノの前のラフマニノフ(撮影者不明、Wikimedia Commons

── ラフマニノフの中でも、ピアノ協奏曲第2番は特に人気です。これまでにも何度か演奏されたことがありますか?

塩見:はい、これまでにも経験はあります。でも、初めてソリストとしてこの曲に向き合ったのは、プロになってからのことでした。つまり、レッスンを受けたことはありません。

したがってこの曲に関しては、「自分がこの曲を聴くとき、どの箇所でどのように心を動かされるのか、それはなぜなのか」を一つひとつ分析しながら、自分の演奏スタイルを組み立ててきました。

── この協奏曲の中で、特に心を動かされる部分、魅力的な部分はどのあたりでしょう。

塩見:魅力的な箇所がたくさんありすぎて難しいですが、たとえば第1楽章の第2主題のような「ラフマニノフらしい言い回し」は、とりわけ心を込めて歌いたい部分です。

また、先ほども話したとおり、和声進行も大きな魅力のひとつです。ラフマニノフの和声進行は「甘い雰囲気」とか、逆に「むせびなくような感じ」と表されることもありますが、個人的には「後ろ髪ひかれるような」和声進行だといつも感じます。

ただ甘いだけでなく、ただ悲しいのでもなく、独特の雰囲気を持った響きです。ベートーヴェンやブラームスの短調とは違う、「ロシアの短調」「ラフマニノフの短調」が表現されているんですよね。そういった調性感や和声感が発露する箇所は、特に味わって演奏したいなと思います。

「音楽のやりとり」を大切に、室内楽のように取り組むラフマニノフ

プラハ公演での共演の様子(曲はリストのピアノ協奏曲第1番)

── 新祝祭との共演は今回で6回目になります。共演いただく中で、新祝祭はどのようなオーケストラだと感じられますか?

塩見:プロ・アマチュア混成でバックグラウンドがさまざまでありながらも、みなさんの「目指すところ」が一緒だというのが、とても素敵だなと思っています。

さらに、プロ奏者の方々も、いろいろなオーケストラから集まってこられて、ルーツがまちまちですよね。そんな方々が、音楽について自由に意見を出し合い、それを音楽監督がまとめるというかたちも、いいなあと思って見ています。プロ奏者も、良い意味でのアマチュアリズムを実践できるオーケストラなのではないでしょうか。

もちろん演奏についても素晴らしい思い出がたくさんあります。ブラームスのピアノ協奏曲第2番でご一緒したときは、最初の水無瀬さんのホルンソロとそのあとのTuttiに感激して、泣きそうになりました。今回のラフマニノフも、とても楽しみです。

── 今回、新祝祭とのラフマニノフのピアノ協奏曲第2番は、どういった演奏になりそうですか。

塩見:これまでに何度も共演を重ねてきた新祝祭さんとの演奏ということで、「音楽のやりとり」を楽しんでいただけるような演奏にしたいですね。

私は室内楽が大好きで、それがピアニストとしての活動の軸でもあります。新祝祭さんとのラフマニノフでも、室内楽的なおもしろさ、音楽の中で起こるいろいろなことを楽しむ姿勢を持ちたいと考えています。
気心の知れたメンバーどうしの信頼感や安心感のもと、ときにはオケのエネルギーや流れに身を任せて、ときには自分の音楽を目一杯表現して、コミュニケーションを楽しみたい。そういったライブ感の中で、ラフマニノフの魅力を伝えられたら嬉しいですね。

京都新祝祭管弦楽団 第7回定期演奏会

日時:2022年9月18日(日)14:00開演(13:15開場)
会場:八幡市文化センター 大ホール + musemoでのオンライン配信

指揮:湯浅篤史
ピアノ独奏:塩見亮

[プログラム]
ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第2番 ハ短調 作品18
マーラー:交響曲第5番 嬰ハ短調

[チケット]
入場料:2,000円(全席自由)※未就学児のご入場はご遠慮ください
ライブ配信:1,000円(10月23日まで何度でもアーカイブ視聴可能)

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